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労働者の適正な労働環境の確保をめざす公共調達基本条例に賛成する

労働者の適正な労働環境の確保をめざす公共調達基本条例に賛成する_c0282566_723272.jpg 市が発注する工事契約、業務委託および指定管理契約においてこれに従事する労働者の適正な労働環境の確保とともに、市内業者優先などで地域内経済の活性化などをめざす、市公共調達基本条例が、9月市議会に提案されました。
 8年前に尼崎市議会へ全国ではじめて同様な趣旨の公契約条例を議員提案し成立しませんでしたが、公契約条例が全国に広がるきっかけとなりました。今回提案されるた公共調達基本条例は賃金条項がなく不十分でありますが、今後とも改善を求めていくことで、日本共産党議員団はこの議案に賛成しました。(写真は本会議場で賛成討論を行う辻おさむ議員です)

辻おさむ議員の賛成討論
 日本共産党議員団を代表しまして、議案第106号 尼崎市公共調達基本条例について「賛成」討論を行います。本条例案は、尼崎市が締結する民間事業者との工事請負契約、業務委託契約および指定管理者契約において、これまで行ってきたまちづくりへの協力、環境改善、障害者雇用など社会的課題の解決にむけた取り組み、地域内経済の活性化をめざした市内業者優先などにたいし、条例上の根拠を持たせようとするものです。あわせて、公共調達に係る業務に従事する労働者の適正な労働環境を確保すること、公共調達に係る業務の適正な履行及びその質を確保することをめざしています。新しい試みとして、元請けとすべての下請け事業者に、「労働関係法令順守報告書」の提出を求め、虚偽や不記載のものがある場合は、再提出、市が直接聞き取ることや罰則、労働者への契約内容の明示、通報制度を規定しています。現場労働者の実態を把握し、法令違反を無くして行こうという試みとしては、評価できるものです。しかし、感想を言わせてもらいますと、「不完全燃焼」「もったいない」の感が否めません。条例に、契約先で働く労働者の賃金の最低額の定めがないものは、いわゆる「公契約条例」にカウントするかどうかという議論もあります。
 本条例でもとめる「労働関係法令順守報告書」の内容は、各種保険加入の有無、労働者の最低賃金額などの記載にとどまっています。これにたいし、契約先労働者の賃金の最低額を規定する「賃金条項」を求める陳情が提出されました。これに賛同する労働組合の数は111にのぼり、連合を筆頭に、尼崎地区労、尼崎労連など、ナショナルセンターの違いを超え、また兵庫土建・阪神土建など全建総連加盟の建設労働者の組合など、まさに労働界の「オール尼崎」ともいえる団体が名を連ねています。当局は、その重みを十分に認識していただきたいと思います。そうはいっても、経営者や受注側事業者が、不安や懸念を持っておられることも事実です。私は、本条例案がめざす「質の確保」という点に注目しています。尼崎市の報告によりますと、今年1月時点で公共調達に係る条例を制定しているのは、29自治体にのぼり、その中で賃金条項を規定している自治体数は18であり、条例化をした自治体の62%を占めています。やる気になれば、出来ないことはありません。賃金条項をふくむ条例を実施している自治体で、いくつかの「効果」が報告されています。賃金に見合う、腕のいい労働者が集まるため、工期も短縮でき、仕上がりも良くなった。――ようするに「手直しが減った」ということであります。
①交通費などの余分な出費を避ける傾向が生まれ、地元発注が広がった。
②元請責任で末端労働者の賃金まで確保するため、重層下請を避ける必要が生まれ、下請の簡素化がすすんだーー重層下請けの簡素化によって、労働者の受け取る賃金が上がったけれど、元請けが支払う金額は変わらないということです。
③契約先労働者の仕事への誇りが生まれ、やりがいを感じるようになり,労働者のモチベーションが上がったーー賃金額はその労働者への評価にもなるわけですから、上がれば「誇り」や「やりがい」がアップすることになります。
④公務・公共サービスに対する労働者の意識が変化し、公的仕事の重要性と責任を自覚するようになる――責任を自覚した質のいいサービスを受け取るのは、まさしく市民であり、質のよい公共サービスは、その自治体の品格を高めるものだと考えます。
――いくつかを紹介しましたが、まだまだあると思います。
 賃金条項をふくむ条例は、「品質確保」という点では、行政にとっても、受注業者にとっても、労働者にとっても「損をしない」制度だともいえます。東京都・多摩市や神奈川県・相模原市では、受注者の側から「条例適用対象を拡げてほしい」との声が上がっていると聞いています。尼崎では、受注者側の理解がまだまだ進んでいない状況もあります。しかし、陳述でもありましたが、「貧困の拡大」が社会問題化しています。地域別最低賃金額の低さがワークングプアの温床となり、政府でさえ最低賃金額1000円への引き上げを口にせざるを得ないほど、深刻化しています。そのことが家計の消費を押し下げ、日本経済に暗い影を落としています。市役所の仕事が「ワーキングプアによって支えられる」ということでいいのか、市役所の仕事は、「最低賃金で働く労働者の質でいいのか」が問われていると思います。
 私たちは8年前、公契約条例を全国ではじめて議員提案しました。これは、一つのモデルを示したのであって、絶対だとは思っていません。その後、全国で条例化する自治体が広がり、「地域経済の振興」「質の確保」など、豊かに発展しつつあります。今回の公共調達基本条例によって、政策効果がでるような取り組みを求めるとともに、賃金をふくむ労働環境の改善は、今後もひきつづき大きな課題であることを指摘して、討論をおわります。ご清聴、ありがとうございました。
by tokusannmi | 2016-10-06 07:31 | 活動日誌 | Comments(0)